任意整理の基礎知識

任意整理の基礎知識

2021.12.13

目次

任意整理とは?他の債務整理との違いについて

任意整理とは、裁判所を通さずに債権者と直接話し合って、借金の返済額や返済方法を変更する債務整理の手続きです。
まずは、任意整理のメリットとデメリットを理解して、自分に合った債務整理の方法かどうかを見ていきましょう。

その他の債務整理との違いについて

任意整理の他には、自己破産・個人再生・特定調停という債務整理の手続きがあります。

自己破産と任意整理の違いとは

自己破産とは、裁判所に申立てをして認められれば、借金がゼロになる債務整理の方法です。
任意整理は利息を減額できるので毎月の返済額は減りますが、元金は減らせず残ってしまう点が、自己破産とは異なります。
自己破産は法律に基づく手続きのため、貸金業者など債権者から強制執行される心配もなくなります。

個人再生と任意整理の違いとは

個人再生とは、裁判所に申立てをして、借金を大幅に減額してもらえる債務整理の方法です。
原則として、借金が1/5~1/10に減額され、3年から5年かけて毎月返済していきます。
任意整理との大きな違いは、多額の借金を大幅に圧縮できることと、法律に基づいた強制的な手続きかどうかという点です。

特定調停と任意整理の違いとは

特定調停とは、簡易裁判所に申立て、調停委員を通して債権者と債務者が話し合いをして、借金の返済額や返済方法を変更する手続きです。
裁判所を通していますが、話し合いは任意で行い、借金の大幅な減額は期待できないという点では、任意整理と同じです。
任意整理と異なるのは、裁判所を通した手続きのため、差押えを止めることができるという点です。

任意整理のメリットとは

(1)手軽に借金を整理できる

個人再生や自己破産は、裁判所を通して手続きを進めますが、任意整理は裁判所を通さないので、裁判所に出向いたり、必要書類の準備もそれほど手間ではありません。
債権者と話し合うだけなので、時間もあまりかかりません。

(2)任意整理する貸金業者を選べる

任意整理は裁判所を通さないので、どの債権者を対象とするかは自由に選ぶことができます。
例えば、自動車ローンはそのまま返済を続けて、他の貸金業者を任意整理したり、返済額の大きい貸金業者を1社だけ任意整理して、残りの貸金業者にはそのまま返済を続けることもできます。

(3)保証人に迷惑がかからない

任意整理する貸金業者を自由に選べるため、保証人がついている借金は自分でそのまま返済を続けて、その他の借金は任意整理することが可能になります。
それによって、保証人に迷惑をかけることを回避できます。

(4)借金の使い途は基本的に問われない

自己破産は、借金の理由が浪費やギャンブルの場合には、免責が認められない可能性があります。
個人再生で「小規模個人再生」という手続きの場合は、債権者の反対意見が多いと、借金の減額は認められません。
しかし、任意整理の場合は、基本的に借金した理由は問われません。

(5)財産を処分する必要がない

自己破産は借金がゼロになりますが、高価な財産は処分し、債権者に配当されます。
個人再生は原則として財産を処分する必要はありませんが、高価な財産がある場合には、借金の減額幅が小さくなることもあります。
任意整理は財産を処分する必要はないので、所有している財産を手元に残すことができます。ただし、ローンを支払い中の商品については、債権者に取り上げられてしまう場合もあります。

(6)費用が安い場合が多い

自己破産や個人再生の場合、裁判所に申立てる際の印紙代や予納金、必要書類の手数料、その他で数万円かかります。
さらに、個人再生は個人再生委員が選任された場合には、15万円~25万円ほどの報酬を準備する必要があります。
任意整理の場合、弁護士費用の他には、手続きにはほとんど費用がかかりません。

(7)周囲の人にバレる心配がない

自己破産や個人再生の場合、官報に氏名や住所が掲載されます。
任意整理の場合は、官報に掲載されることはないので、第三者に知られることはありません。

(8)職業制限や資格制限がない

自己破産の場合は、警備員や弁護士、司法書士などの職業に就くことが一定期間制限されます。
任意整理の場合は、職業や資格の制限はありません。

任意整理ならではのデメリットとは

(1)借金の支払いが免除されるわけではない

自己破産や個人再生の場合、借金の全額または一部の支払いが免除されます。
しかし、任意整理の場合は、基本的に元金の減額はできないので、借金を減額させる効果はあまり高くはありません。
借金を減額させるというより、返済期間を延長し、毎月の返済額を減らすことで、返済の負担を軽減する手続きです。

(2)借金の大幅な減額は期待できない

任意整理で免除が可能なのは、遅延損害金と将来利息です。
しかし、最近では遅延損害金や将来利息の免除に応じない貸金業者もいるので、任意整理によって借金を大幅に減額することは難しくなっています。
ただし、2010年6月17日以前に借入を開始した方、借金を完済してから10年以内の方は、過払い金が発生しているケースがあり、借金が大幅に減る可能性があります。

(3)ある程度の収入が必要

任意整理は、条件を変更した後、借金を継続的に返済していく手続きなので、ある程度の定期的な収入が必要になります。

(4)差押えを止めることはできない

借金の滞納が続くと、債権者が裁判を起こし、給料や預金などが差押えられることがあります。
自己破産や個人再生、特定調停は裁判所を通した債務整理手続きのため、差押えを止めることができますが、任意整理は裁判所を介していないため、差押えを止めることはできません。
そのため、差押えを受ける前に、早期に借金問題を解決することが重要です。

(5)任意整理に応じてくれない業者もある

ほとんどの貸金業者は任意整理に応じてくれますが、中には応じてくれない業者もあります。
また、何度も滞納していたり、借入れてから間もない場合も、任意整理に応じてもらえないことがあります。

任意整理と他の債務整理に共通するデメリット

任意整理と他の債務整理に共通するデメリットは、ブラックリストに登録されることです。
ブラックリストに登録されると、個人信用情報機関に借金を返済しなかったという事実が、事故情報として登録されます。
登録後、5年~10年ほどは以下のデメリットを受けることになります。

(1)借入れが難しくなる

新たな借入れが難しくなります。たとえ生活費が不足しても、金融機関や貸金業者からお金を借りることができず、5年~10年は借金に頼らない生活をしなければなりません。

(2)ローンが組めなくなる

ローンが組めないので、住宅ローンや自動車ローン、学資ローンなども利用できなくなります。
ただし、配偶者名義や成人した子どもの名義でローンを組むことはできます。

(3)クレジットカードが使えなくなる

今まで持っていたクレジットカードは強制解約となり、新たにカードを作ることも難しくなります。
カードを使う必要がある場合は、家族カードやデビットカードなどを利用します。
ただし、5年~10年が経過すると、信用情報機関に登録された事故情報は削除されるため、その後は借入れやローン、クレジットカードも利用できます。

任意整理ができない場合について

任意整理ができない3つのパターンについて

任意整理は、裁判所を通さず、債権者と債務者が直接話し合いをします。
話し合いができないケースはあまり多くはありませんが、話し合いが難しい場合として、以下の3つのパターンがあります。
●債務者側に任意整理できない重大な事情があるとき
●債権者側に任意整理に応じられない事情があるとき
●借金それ自体に任意整理できない事情があるとき

では、それぞれのパターンについて詳しくご説明しましょう。

債務者側の事情で任意整理できないケース

(1)債務整理の費用を工面できない場合

弁護士や司法書士に依頼する費用がない場合、債務者本人が自分で債務整理を行うことになりますが、債権者との交渉の成功率は下がってしまいます。
しかし、弁護士や司法書士の費用はほとんどの事務所で分割払いに対応しているので、まずは無料相談を利用してみましょう。
また、低所得者の場合は、法テラスに債務整理の費用を立て替えてもらうこともできます。立て替えてもらった費用は、毎月1万円ずつ分割で返済していきます。
生活保護受給者の場合は、法テラスへの返済も免除または猶予されます。

(2)債務者に収入がない場合

任意整理では、債権者と和解が成立した後、借金の残りの元金を分割返済していくので、継続的な収入があることが条件になります。
しかし、家族に援助してもらうなど、債務者以外の人の収入で支払いを継続できたり、家計をやりくりして返済額を工面できれば、専業主婦や年金生活者でも任意整理することは不可能ではありません。

(3)すでに任意整理していた場合

過去に任意整理を行い、何らかの事情で返済ができなくなった場合、再度の任意整理は難しくなります。
ただし、返済ができなくなった理由が、勤務先の倒産または給料減、病気・ケガ・被災などによる失職や減収といった場合や、それまでの返済状況によっては、再度の任意整理に応じてもらえる可能性もあります。
再度の任意整理は法律で禁止されているわけではないので、諦めずに複数の弁護士や司法書士に相談してみましょう。

債権者側の事情で任意整理できないケース

(1)債権者が中小の金融機関である場合

「街金」と言われる消費者金融のような中小の金融機関が債権者の場合は、会社の方針として任意整理に応じてもらえない可能性があります。

(2)債権者と弁護士・司法書士との関係が悪い場合

債権者と、任意整理を依頼した弁護士や司法書士との関係が悪い場合は、話し合いに応じてもらえないこともあります。
しかし、別の事務所では任意整理に応じてもらえる可能性もあるので、他の弁護士や司法書士に相談してみましょう。

任意整理することができない5つの借金

(1)融資を受けてから間もない借金

取引の期間が短く、ほとんど返済していないような段階で任意整理を依頼すると、「返済する意思がないのに借金した」と思われて、応じてくれないことがあります。
このような場合、短期の分割になってしまうので、利息の完全カットができないケースもあります。

(2)借金の金額が多額過ぎる場合

借金の金額が多過ぎると、話し合いがまとまらない可能性が高くなります。
任意整理では、借金の残りの元金を分割払いする条件について交渉しますが、一般的には3~5年の分割払いで返済していきます。
そのため、残りの元金が「毎月の返済可能額×36~60」の金額を超えてしまうと、話し合いがまとまらないこともあります。
ただし、これまでの返済状況や一時金で支払える金額などの事情を考え合わせて、弁護士や司法書士が粘り強く交渉することで、5年を超える分割払いも不可能ではありません。

(3)低利息の借金の場合

任意整理は「将来利息の免除」により、返済負担を軽減できます。
しかし、住宅ローン、公庫からの借入金、奨学金のような低利息の借金の場合、任意整理をしても返済額をあまり減らせません。
また、これらの借金のほとんどは借入額も高額な場合が多いので、3~5年で分割返済することが困難なケースが多いでしょう。

(4)担保を提供している借金の場合

住宅ローン・不動産担保ローン・自動車ローンなど、担保を提供している借金の場合も、任意整理できないケースが多くあります。
債権者としては、残元金を数年かけて返済するより、担保を処分して回収するほうがメリットが多いいからです。また、担保を提供している借金は額が大きいので、任意整理に適さないケースが多いでしょう。

(5)債権者からすでに裁判所の手続きを申し立てている場合

借金を長期間滞納していて、債権者が民事訴訟や支払督促など裁判所の手続きを申し立てている場合は、任意整理できないことがあります。
訴訟外の和解(任意整理)に応じるよりも、訴訟内で和解をしたほうが強制執行した場合に有利になるからです。
支払督促の送達を受けて2週間以上放置してしまった場合、債権者は給料差押えなどの強制執行を申し立てることができます。

借金を任意整理できないときの解決方法

借金を任意整理で解決できないときは、自己破産・個人再生のいずれかの解決方法があります。
どの方法を選択すれば良いかは、債務者の借金額・毎月の返済可能額・保有財産の状況などによります。
目安としては、3年間で合計100万円以上の返済が可能な場合は、多額の借金があるケースでも、自己破産ではなく個人再生で解決できる可能性があります。

任意整理で借金を解決するためには、「早期対応」が何よりも重要

任意整理できない多くの場合、対応が遅くなったことで、借金返済のためにさらに借金をして、状況が悪化してしまうケースが多く見られます。
利息を支払うだけで精一杯の場合には、健康保険・年金保険・税金などの多額の延滞を抱え込み、借金返済に回せる余裕もなくなってきます。
「借金の返済が苦しい」と感じたら、1日も早く弁護士や司法書士にご相談ください。借金・債務整理について、無料相談で対応いたします。

任意整理の流れやその後の返済期間について

任意整理後の返済期間について

(1)一般的には3年程度

任意整理の手続き後、一般的には3年間で毎月払いで借入金を完済する約束をします。
例えば、200万円の借入金がある場合、毎月の返済額は55,600円程度になります。

(2)返済期間を5年に延長することもできる

返済期間が3年だと毎月の支払金額が上がって苦しい、という場合は、返済期間を5年程度まで延ばせることもできます。
例えば、200万円の借入金を5年で返済する場合、毎月の支払額は33,400円程度になります。
5年でも返済が難しい場合は、7年や10年に延ばせるケースもあるので債権者と交渉してみましょう。

任意整理の手続きにかかる期間と流れ

(1)自分で借入金の状況を整理する

任意整理を弁護士に依頼する場合、相談に行く前に、自分で借入金の状況を整理しておきます。
どの業者からどれくらいの借入れがあり、現在の残高はどの程度なのか、明細書や請求書を整理したり、簡単な表を作成しておきましょう。

(2)弁護士へ任意整理を依頼する

次に、弁護士を探しますが、借金問題に強く、任意整理の解決実績の豊富な弁護士を選びましょう。
依頼するときは、費用についてもしっかり確認します。
弁護士が各借入先に「受任通知」を発送すると、債権者から電話や郵便で督促を受けることはなくなります。

(3)利息の引き直し計算を行う

弁護士が受任通知を発送すると、債権者から「取引履歴」が送付されます。送付までの期間は、受任通知後数日で送ってくる業者があれば、数ヶ月かかるところもあります。 弁護士が取引履歴を受け取ると、「利息制限法」という法律の定める利率に引き直して再計算し、返済すべき借入金の金額を確定します。

(4)交渉

返済する借入金額を確定できたら、任意整理後にどのくらいの期間、どのように支払うか、返済計画を立てます。
債務者本人が了承したら、返済計画を債権者に送付します。債権者が提案を受け入れたら和解でき、了承しない場合は話し合いを継続します。
提案後、和解までは早くて1週間かかり、交渉が難航した場合は数ヶ月かかることもあります。

(5)和解契約

交渉によってお互いが納得できたら、債権者との間で和解契約を締結し、借入金を何年の期間で返済すべきか確定します。
弁護士が代理人の場合は、弁護士が和解契約書を作成し、依頼者に送ります。

(6)返済開始

和解契約の翌月から、返済を開始します。
返済が始まったら生活を慎んで、滞納しないように注意しましょう。

(7)任意整理にかかる期間

任意整理にかかる期間(2)~(6)は、借入先の対応によって異なります。
対応の早い債権者の場合は1ヶ月で解決する場合がありますが、対応が遅かったり交渉に時間がかかる場合は、半年以上かかることもあります。
借入れ件数が増えると、解決にかかる期間も長引きますが、一般的には3ヶ月~半年くらいかかるでしょう。

任意整理により信用情報機関に残る情報と登録期間

(1)任意整理をすると、ローンやクレジットカードを利用できなくなる

任意整理の手続き後、ローンやクレジットカードを利用できなくなる、「ブラックリスト状態」になります。
これは、信用情報機関が管理している個人信用情報というローン・クレジットの利用履歴に関する情報に、ネガティブな内容が登録されたためです。

(2)任意整理後、信用情報に情報登録される期間

信用情報機関には、JICC、CIC、KSCの3種類があり、それぞれ対応が異なります。

①JICC【株式会社日本信用情報機関】
主に消費者金融が加盟し、任意整理を開始した時点で事故情報が登録されます。情報の残存期間は5年で、任意整理後5年が経過すると、事故情報は消えます。

②CIC【株式会社シー・アイ・シー】
主に、クレジットカード会社や信販会社が加盟し、任意整理をしたことで事故情報が登録されることはありません。完済してから5年以内の期間、契約情報が保管されます。
ただし、手続き前に支払いを滞納していた人の場合、その時点で延滞情報が登録され、ブラック状態になっています。完済してから5年間、クレジットカードなどを利用できない可能性があります。

③KSC【全国銀行個人信用情報センター】
主に、銀行や信用金庫などの金融機関が加盟し、任意整理によって事故情報が登録されることはありません。しかし、代位弁済(保証会社が銀行ローンを支払うこと)の情報が残るために、ブラック状態になってしまいます。
銀行ローンを任意整理すると代位弁済が起こり、その時点から5年間、記録が残るので、その間は銀行や信用金庫などから借入れはできません。

(3)信用情報を確認する方法

自分の個人信用情報を確認したい場合は、上記の3つの信用情報機関に個人信用情報の開示請求をします。
郵送、ネット、窓口での申請(KSCは郵送のみ)によって、開示してもらうことができます。
書類が届き、「異動」「代位弁済」「延滞」などの情報がついていたら、ブラック状態ということなので、申請してもローンの審査は通りません。
任意整理後、必要な期間が経過し、ブラック情報が消されてから、ローンやクレジットカードの申請をします。

(4)詐欺業者に注意

いったん個人信用情報にブラックリスト情報が登録されると、消すことはできません。
「信用情報を消してあげる」と費用を請求する業者がいますが、詐欺なので信用しないでください。

信用情報機関に情報が残っている期間にできないこと

(1)クレジットカードの発行

自分名義のクレジットカードを、新たに発行することはできません。
ただし、債務整理や延滞をしていない家族名義のカードは発行でき、それを本カードとした家族カードも作ることができるので、あまり不便さは感じないでしょう。

(2)キャッシング

サラ金などのキャッシングも利用することはできません。
しかし、サラ金の場合は主にJICCに加盟しているので、任意整理後5年が経過すると、再び借入れできる可能性があります。

(3)各種のローン

ブラック状態になると信販会社の審査に通らないので、住宅ローン・自動車ローン・教育ローン・物品を購入する際のローンなどは利用できなくなります。
携帯電話の端末代金の分割払いも難しくなります。

(4)奨学金の連帯保証人

ブラック状態になると、他人の借金の連帯保証人にもなれません。
住宅ローンや銀行ローン、不動産担保ローンなどの保証もできず、子どもの奨学金の連帯保証人も難しくなります。
子どもが奨学金を借りるときは、配偶者や他の身内に保証人になってもらったり、保証機関による保証を利用しましょう。

任意整理における弁護士の選び方とは

任意整理を弁護士に依頼するメリット

(1)取立てがすぐに止まる

弁護士に任意整理を依頼すると、貸金業者からの取立てが一切なくなります。
貸金業法で、弁護士から受任通知を受け取った貸金業者は、債務者に直接取立て行為を行ってはならない、と定められているからです。(同法第21条1項第9号)

(2)話し合いを代行してくれる

任意整理を弁護士に依頼すると、代理人として貸金業者と話し合いを行い、専門的な見地から交渉することでスムーズに進みます。
依頼者も時間や労力がかからず、精神的にも楽になるでしょう。

(3)借金の減額や長期の分割返済が可能になる

自分で任意整理の交渉をすると、貸金業者は借金の減額や長期の分割返済にはなかなか応じてはくれません。
しかし、弁護士が専門的な知識とノウハウを駆使して交渉することで、5年を超える長期の分割払いを認めてもらったり、返済月額を支払い可能な範囲内にしてもらえるケースもあります。

任意整理に不慣れな弁護士に依頼したらどうなるか

(1)返済額に違いが出る

任意整理は交渉によって返済額を決めるので、交渉力が物を言います。
弁護士といっても交渉力には差があり、裁判には強くても交渉は苦手だったり、分野によっても交渉力は異なります。
任意整理に強い弁護士は、依頼者の話をじっくり聞いた上で、本来の返済額を割り出し、貸金業者としっかり交渉して、有利な結果へと導きます。
貸金業者も、任意整理に強い弁護士が相手だと、最初からあっさりと弁護士の提案に応じることもあります。

(2)過払い金を取り戻せるかどうかで違いが出る

任意整理の手続きでは、貸金業者から取引履歴を取り寄せて、利息引き直し計算を行います。
この時点で、過払い金が発生しているかどうかが判明することもあります。
取引の途中で期間が空いている場合では、過払い金の計算方法で争いになることがあります。その場合、有利な計算方法で過払い金を認めさせることができるかどうかで、返済額に大きな差が出るケースもあります。

(3)手続きにかかる期間に違いが出る

任意整理の経験が豊富な弁護士は、手続きを進めるのが迅速で、貸金業者との交渉もスムーズに行うので、早く解決することができます。
ただし、返済開始までに時間が必要だという依頼者に応えるために、あえて期間を置く場合もあります。

(4)弁護士費用に違いが出る

任意整理を弁護士に依頼するには費用がかかりますが、その額は法律事務所によって異なります。
実績のある事務所ほど、良心的で利用しやすい料金体系を定めています。
費用項目は、相談料、着手金、解決報酬、減額報酬などがあります。相談料については無料としている事務所も多いのですが、その他の費用項目は各事務所が独自に定めています。
費用が安ければ良いというわけではありませんが、高過ぎるとコストに見合わないこともあるので注意しましょう。

任意整理を依頼する弁護士の選び方

(1)任意整理の解決経験が豊富

任意整理の解決経験が豊富にあることが必須条件です。経験が少ない事務所は、なるべく避けた方が良いでしょう。
どのくらい実績があるか、法律事務所のホームページを調べたり、無料相談の際に直接聞いてみることもできます。

(2)柔軟に解決方法を提示してくれる

ご相談者の方の状況に応じて、柔軟に対応してくれるのが良い弁護士です。
例えば、「家族に秘密にして欲しい」「月々の返済額を〇円以下にして欲しい」「着手金を分割払いにして欲しい」などの要望を聞き、可能な限り実現しようとする姿勢があるかを確認しましょう。
また、債務整理に強い弁護士なら、場合によっては、任意整理以外の自己破産や個人再生、過払い金請求などを提示し、幅広い視点でご相談者のことを考えてくれるでしょう。

(3)説明がわかりやすく話しやすい

借金問題を解決してもらうためには、自分の状況を正確に弁護士に理解してもらう必要があります。
しかし、話しづらいと、重要な事情を伝えることができず、望んでいた方向とは違うところに向かってしまうこともあります。話しやすく、一緒に問題を解決してくれるかどうかが大事なポイントです。
また、説明がわかりやすいことも重視しましょう。難解で専門的な法律知識を、一般の方にもよく理解できるように説明してくれないと、正しい解決方法を選択することができません。わからないことがあれば弁護士に質問し、わかりやすい回答が返ってこない場合は、依頼するか考え直したほうが良いでしょう。

債務整理の費用について

債務整理でかかる費用について

債務整理をした場合、任意整理、個人再生、自己破産によってかかる費用は異なります。
詳しくは弁護士費用よりご参照ください。

債務整理を専門家に依頼せず、自分で手続きをすることは可能か

費用を削減するため、専門家へ依頼せずに、債務整理を自分で手続きすることは可能ですが、事務手続きをすべて自身で対応する必要があります。

(1)時間がとられる

任意整理では債権者との直接交渉、その他の法的整理手続きでは、裁判所への提出書類の準備~提出、その後の対応など、かなりの時間がとられます。

(2)法律知識が必要

任意整理の場合は、利息制限法に従った過払い金の計算をして、これを超過した利息分を差し引いた金額で調整を図ります。
個人再生では法律に従って再生計画を立てていかなければならず、自己破産においても法律知識は必要不可欠です。

(3)形式的なミスの可能性

申告する必要があることとないことが、よくわからないまま手続きを進めてしまうと、形式的な判断におけるミスが発生する可能性があります。その結果、希望する減額が実現できないことになりかねません。

(4)どの債務整理手続きにするかの決断は専門的

任意整理か、個人再生か、自己破産の手続きをとるのか。どの方法が自分にとってベストなのかを選択するのは、非常に専門的です。
「借金はゼロにしたいから自己破産」「自宅は残したいから個人再生」など単純な決定をしてしまうと、期待する費用対効果が得られない可能性が出てきます。

まとめ

任意整理は、裁判所を通さない手続きなので、官報に載ることはなく、誰にも知られずに借金問題を解決していくことができます。
借金をゼロにすることはできませんが、将来の利息はカットされ、過払い金があったら、その分を返済に充てることができます。
任意整理は自分で行うことも可能ですが、貸金業者との交渉や手続きは難しいので、弁護士などの専門家に依頼したほうが良いでしょう。
また、手元に財産が残るので、毎月きちんと借金の返済ができれば、早期に生活を再建することもできます。
借金問題は早期に解決することが何よりも重要です。お悩みの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。